特集 臨床的時間論―生きた時間の回復と治癒
「わからないこと」が育む時間―キンダーカウンセリングでの出会いから
森岡 理恵子
1
1奈良教育大学
pp.545-549
発行日 2024年9月10日
Published Date 2024/9/10
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I はじめに
臨床心理士の保育現場への訪問による子育て支援,「保育カウンセリング」の活用が広まっている。保育カウンセリングは地域性や現場の要請に応じて多様な展開が見られるが,関西地域では主に幼稚園を対象とする「キンダーカウンセリング」として多くの心理士が活動している(そこに関わる心理士を「キンダーカウンセラー」と称する)。
幼児期には人との関わりの中で,子どもたちの主体としての“私”が育まれる。日々思いを受けとめられ,仲間と交わし合う経験はその後の人生の基礎となるだろう。キンダーカウンセラーの活動では保護者の子育ての悩みをうかがい,教師とのコンサルテーションで子どもの見立てを共有し,子どもが生き生きと過ごし自分の思いを実現するためにできる手立てを考える。限られた時間の活動では一部の園児の相談が主となるが,その働きを通して全ての園児の“私”を育む機会となることを願っている。
キンダーカウンセリングでは保育に直接の影響を与えない観察(参与観察)が重視されることが多いが,筆者は自由あそびの時間などで子どもたちと関わることもある。河合(1992)は,客観的に対象を自分から切り離した見方に対して,「現象の中に入れこむ」理解を試みるときに,子どもの自己を実現する過程が動き出す,と述べた。西(2016)は保育の場において心理臨床家との関係で無意識的な交流が生じ,イメージが自律的に展開する様子を記述した。筆者も,子どもの傍にいて意味を感じ取り,交流を深めたいと思っている。

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