論評
マクロ経済分析の視点からは日本の社会保障費は大きく増加させられる
会田 卓司
1
1クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト
pp.18-26
発行日 2024年11月21日
Published Date 2024/11/21
DOI https://doi.org/10.57527/JUNPO2946005
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社会保障費抑制がもたらす悪循環 2024年度の社会保障費は当初予算で37・7兆円となり、1999年度の当初予算の16・1兆円から2・3倍も増加している。政府は、高齢化の進行にともない、今後の社会保障費の大きな増加を警戒している。2024年の政府の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)では、「高齢化率は継続的に上昇し、医療費や介護費への影響が大きい75歳以上や85歳以上の人口は長期にわたって段階的に増加する一方、生産年齢人口は減少が見込まれる」と指摘している。政府は、社会保障費を高齢化による増加分に相当する伸びに収める目安を設け、増加を抑制する取組みを継続している。社会保障の財源は、税や社会保険料で支えられており、国民負担を軽減する観点から社会保障費の伸びに一定の歯止めをかける必要があると理解されている。 一方、社会保障費の抑制を続けた結果、医療や介護分野の賃金が伸びず、社会保障の担い手の確保が困難な事態となっている。国民の間で十分な社会保障を受けられない不安が拡大し、将来不安で国民は生活を切り詰め、その結果として経済成長が妨げられている。経済成長の低迷による国民の所得の伸び悩みによって、税や社会保険料の財源が抑制されることで、更に社会保障費が抑制され、国民の不安が拡大するという悪循環が懸念されている。
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