目でみるシリーズ 画像でみる緑内障の病態
第25回 二光子励起顕微鏡を用いた生体イメージング
井上 俊洋
1
1熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座 教授
pp.1-5
発行日 2025年8月29日
Published Date 2025/8/29
DOI https://doi.org/10.34449/J0024.01.70_0001-0005
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いうまでもなくヒトは多細胞生物であり,細胞が共同して機能することで生命活動は維持されている.疾患とは,つまるところ細胞の異常であり,緑内障もその例外ではない.治療における効果と安全性も細胞の状態に依存する.すなわち,細胞を理解すれば,発症や病態の進行,治療に対する反応性などの分子メカニズムが理解でき,疾患の克服につながるといえる.ただし,顕微鏡レベルの大きさである細胞をありのままに観察する方法は限られる.組織学/病理学的な手法では一細胞を個別に視認できるが,固定された標本であることから,細胞の動態はわからない.また,光学顕微鏡では観察できる深度は浅く,共焦点顕微鏡は生細胞への障害性が高い.二光子励起顕微鏡はこうした生体イメージングの難しさを克服できるモダリティである.生体の細胞動態を視覚化できることから,2000年代後半から急速に報告が増えている.緑内障病態を明らかにするというミッションに対し,われわれは長年にわたって二光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングに取り組んできた.現時点では動物モデルに限った研究であり,時間と労力を要する手技ではあるが,有意義な成果が着実に積み重ねられている.われわれの教室において,これまでに得られた成果と,現在取り組んでいるプロジェクトについて紹介し,緑内障研究における今後の展望について考えてみたい.

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