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ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin;hCG)は,胎盤の栄養膜細胞が産生する性腺刺激ホルモンで霊長類に特徴的なホルモンで,げっ歯類や反芻動物にはこのような胎盤性の性腺刺激ホルモンは存在しない。黄体形成ホルモン(luteinizing hormone;LH)と受容体を共有しており,妊娠黄体の分化を誘導して黄体ホルモンの分泌を刺激し,子宮内膜の胚着床を維持する。hCGは着床前の胚盤胞からも分泌されることが示されており,正確なメカニズムはいまだ不明だが,子宮内膜の受容能力を高める重要な胚シグナルの1つとされている。胚の着床には性ステロイドホルモンによる子宮内膜の分化・機能維持に加え,胚と母体の子宮内膜との間の直接的なクロストークが必要であると推察され,霊長類であるヒヒではhCGが子宮内膜間質細胞のα-平滑筋アクチンや腺上皮のグリコデリン発現を直接誘導し,胚着床前の子宮環境を変化させることが示唆されている1)。またヒトでは,hCGの子宮内投与により,子宮内膜間質細胞の分化マーカーであるインスリン様増殖因子結合蛋白質-1(insulin-like growth factor-binding protein1;IGFBP-1)やプロラクチンの発現が抑制され,着床関連因子である白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor;LIF)やマクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony-stimulating factor;M-CSF)および血管新生因子の発現が増加すると報告され,hCGによるヒト子宮内膜の分化と血管形成の制御機構の存在が推察されている2)。以上のように,hCGは胚シグナルとして,黄体に加えて子宮内膜機能にも直接影響を与えることが提唱されている。
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