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脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第15回
武谷 雄二
1
1東京大学名誉教授/医療法人社団レニア会アルテミスウイメンズホスピタル理事長
pp.68-71
発行日 2017年9月1日
Published Date 2017/9/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.24.03_0068-0071
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女性にとって母親になるということは,育児を通じてこれまでに経験したことがない役割を担うことになる。すなわち子どもを庇護し,社会的に独立した個として生存するために大きな支えとなることである。また育児によるストレスを軽減,回避するために多くのことを学ばなければならない。さらに育児を通じて子どもの存在を何事にも優る喜びと感じられるようになり,そのことでこれまでと異なった価値観や人生観を抱くようになる。このため出産は女性にとってアイデンティティシフト(identity shift)の時期といわれている。一般的にみられる本能である異性との接触,食欲,危険の回避,社会的優位性の追及などとともに,母性本能はヒトをはじめとする多くの哺乳類にとって脳内に刷り込まれた生来的な性質であり,これなくして種が存続することはありえない。
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