連載 ゲノム医療の現状
標準治療開始前に行うがん遺伝子パネル検査への期待
松原 淳一
1
1京都大学大学院医学研究科腫瘍内科学/京都大学医学部附属病院腫瘍内科 准教授
pp.54-57
発行日 2024年6月10日
Published Date 2024/6/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.41.02_0054-0057
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抗がん剤治療の臨床現場では、がん遺伝子パネル検査により個々の症例に最適な治療薬を選択するprecision medicineが世界的に普及してきている。わが国においても5種類のがん遺伝子パネル検査が保険承認となっている。しかしながら、その保険適用は「標準治療が終了した(終了見込み含む)もしくは、ない症例」に限られており、最適な治療薬を選ぶためのがん遺伝子パネル検査のメリットが生かされていない。われわれは先進医療Bで「標準治療開始前にがん遺伝子パネル検査を行う臨床研究(FIRST-Dx研究)」を実施した。その結果、エキスパートパネルで推奨治療を提示できる症例の割合は61%と高い割合であった。また、研究開始後7.9カ月の早期中間解析で既に19.8%がエキスパートパネル推奨治療を受けており、保険診療でのリアルワールドデータ(9.4%)に比べて高い数字であった。本稿では、標準治療開始前にがん遺伝子パネル検査を行うことで推奨治療薬剤へのアクセス割合が向上する可能性や、これからのがんゲノム医療について考えてみる。
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