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大規模臨床試験により,糖尿病早期の血糖コントロールの状態が記憶され,後年,メタボリックメモリーとして糖尿病合併症の進展に関与することが明らかになった。1型糖尿病患者に対する介入試験であるDiabetes Control and Complications Trial(DCCT)で血糖を厳格に治療した群と通常療法群に分け,その後の観察研究のEpidemiology of Diabetes Interventions and Complications(EDIC) studyで合併症の発症を比較したところ,DCCT studyの間に厳格に血糖を治療した群では,介入を終えてEDIC studyの間に血糖値が通常療法群と差がなくなってからも,腎機能悪化を生じる症例数が継続して抑えられた1)。2型糖尿病患者においても,United Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)で同様のメモリー現象が認められた2)。最近発表されたHbA1c増加量の計算結果によると,メモリー現象は高血糖への曝露量の総計によって説明可能であるとされている3)。つまり,高血糖により引き起こされる何らかのシグナルが標的臓器に蓄積し,長期間持続するフェノタイプ変化として記憶され,合併症を引き起こすと考えられるが,そのメカニズムはいまだ解き明かされていない。想定されている機序には終末糖化産物(advanced glycation end product:AGE)を中心とした糖化産物によって引き起こされる反応やエピジェネティクス機構が挙げられる。「KEY WORDS」DNAメチル化,メタボリックメモリー,BET阻害薬,ヒストンアセチル化,ヒストンメチル化
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