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グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、血糖コントロールおよび、一部では心血管リスク減少に有用であるとして2型糖尿病(T2D)患者に対し推奨されている。第3相臨床試験プログラムであるPeptide InnOvatioN for Early diabEtes tReatment(PIONEER)試験の結果をもとに、世界初の経口GLP-1RAである経口セマグルチドは米国、欧州で承認され、日本においてもT2Dを適応症として承認された。PIONEER試験は、様々な背景を有するT2D患者を対象に世界的に行われ、そのうち2試験は日本人T2D患者のみを対象として、経口セマグルチドの有効性および安全性が検討された。日本人患者を対象とした試験(PIONEER9および10)では、各エンドポイント(HbA1c、ならびに体重のベースラインからの変化量などの有効性、および安全性評価項目)を、経口セマグルチドとプラセボおよび汎用される皮下注射製剤GLP-1RAであるリラグルチド0.9mg(PIONEER9)、デュラグルチド0.75mg(PIONEER10)で比較検討した。治療方針estimand(治験薬の中止および/またはレスキュー治療薬の有無にかかわらず、すべての無作為化された患者の治療効果)における結果、HbA1cのベースラインからの変化量に用量依存性が確認され、プラセボと比較して経口セマグルチド3mg、7mgおよび14mgで有意な低下と(投与後26週および52週)、リラグルチド0.9mgと比較して経口セマグルチド14mgで有意な低下を示した(投与後26週のみ)、また、デュラグルチド0.75mgと比較して経口セマグルチド14mgで有意に低下し(投与後26週および52週)、経口セマグルチド7mgとデュラグルチド0.75mgでは同程度に低下した(投与後26週および52週)。体重のベースラインからの変化量は、プラセボと比較して経口セマグルチド14mgで有意に減少し(投与後26週および52週)、リラグルチド0.9mgと比較して経口セマグルチド7mg(投与後26週)および14mg(投与後26週および52週)で有意に減少した。また、デュラグルチド0.75mgと比較して経口セマグルチド7mgおよび14mgで有意に減少した(投与後26週および52週)。日本人T2D患者を対象とした国内試験で認められた経口セマグルチドの有効性は、国際共同試験と比較して、HbA1c低下量が大きく、体重減少が小さい傾向にあった。経口セマグルチドの忍容性は、既存の皮下投与製剤のGLP-1RAの安全性プロファイルと同様に良好であり、最も多く報告された副作用は軽度~中等度の一過的な胃腸障害であった。また、心血管リスクの高いT2D患者において、経口セマグルチドの心血管疾患に対する安全性が海外で行われたPIONEER6で検証された。一連のPIONEER試験プログラムの結果から、経口セマグルチドは日本および海外のT2D患者の血糖コントロールに有効であり、良好な忍溶性を示す可能性が示唆された。これらの結果から経口セマグルチドは、特に注射による治療の開始や強化に消極的なT2D患者の血糖コントロールにおいて重要な治療の進歩の一助になることが期待される。
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