総説
2型糖尿病治療における新しいGLP-1受容体作動薬 経口セマグルチドの作用機序ならびに特性
綿田 裕孝
1
1順天堂大学 大学院医学研究科人体の生命機能代謝内分泌学講座
キーワード:
糖尿病-2型
,
経口投与
,
薬物相互作用
,
消化管吸収
,
Semaglutide
Keyword:
Drug Interactions
,
Administration, Oral
,
Diabetes Mellitus, Type 2
,
Semaglutide
,
Gastrointestinal Absorption
pp.717-725
発行日 2021年5月1日
Published Date 2021/5/1
DOI https://doi.org/10.34433/J00697.2021216724
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胃液中に含まれるタンパク質分解酵素による分解および消化管上皮からの吸収不良により絶対的バイオアベイラビリティを達成しないことから、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬の経口投与は、極めて困難であると考えられてきた。経口投与を阻むこれらの問題を克服するため、経口セマグルチドには、胃粘膜からのセマグルチドの吸収を促進する吸収促進剤として、サルカプロザートナトリウム(SNAC)が含有されている。セマグルチドの半減期は約1週間と長いため、経口投与時において1日ごとの吸収率に変動がある場合にも十分な曝露量の維持が可能である。経口セマグルチドの吸収は食事の影響を受ける。また、経口セマグルチドを50mLの水と服用すると、240mLの水と服用した場合に比べて曝露量が多くなることから、飲水量もセマグルチドの吸収に影響を及ぼす。そのため、経口セマグルチドは、1日のうちの最初の食事または飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに服用し、30分以上経過してから飲食および他の薬剤を経口摂取するよう患者に指導する必要がある。また、薬物動態を検討した試験から、多くの患者に使用される薬剤と併用しても臨床的に問題のある相互作用を起こさないことが示されているが、治療域が狭い薬剤と併用する場合、臨床モニタリングを強化するなどの注意が必要である。肝機能障害、腎機能障害または上部消化管疾患を有する患者においても、特別な投与条件や用量調整は不要である。経口セマグルチドは、その進歩した薬理学的特性により、増加しつつある日本人2型糖尿病患者の治療に対し、有用な治療選択肢の1つとなる可能性がある。
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