- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
病院でのリハビリテーション(以下リハ)からの卒業を目指し,より専門性の低い通所介護や地域の社会活動への移行が促されている.しかしリハを受ける患者の多くは「治して欲しい」という受け身の立場にとどまることが多く,在宅復帰後に主体的に自身の健康管理を行えるケースは少ない.医療者の問題としては,リハの最終的なゴールが在宅生活での日常生活の自立であるが,在宅復帰後の治療プランや効果についてのフィードバックが少なく,客観的なアウトカム評価がないため,効率的で効果的なリハの選択がなされていないことも心配される.これは,個人スキルが十分に把握できていない,トレーニングタスクがエビデンスに基づいて決定されていない,トレーニング効果が実感できない,等の問題から生じている.これらは長い経験をもち,きめ細かな配慮ができるベテラントレーナーがいれば顕在化しないが,高齢化によりトレーナーの質と量が確保できなくなりつつあることから,高精度,低コスト,かつユーザーへの負担を最小限に抑えた構成で運動情報を取得できる運動センシング技術と,運動情報に基づくスキル予測技術,さらに個人スキルに基づく効果的な介入を行えるリアルタイム情報提示システム等の必要性が高まっている.
そこで筆者らは,非接触センサを用いた動作計測と日常生活動作能力の推定,在宅リハをサポートするソフトウェア等の技術を用いて,AIを利用した簡易センシングによる運動能力の把握と能力に応じたトレーニング提案に関する技術を開発し,主体性をもったトレーニングをサポートすることで,健康長寿を楽しむスマートソサエティの実現に貢献することを目指した開発を行っている.以下,本稿では筆者らが開発を進めているAI技術を活用したスマートコーチング技術として,非接触運動センシングによる動作計測とFIMの推定と,モバイルデバイスを活用した介護予防体操支援について概説する.
Copyright© 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.