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フレイル対策としてのラジオ体操
-その効果と導入するうえでの注意点
大須賀 洋祐
1
Yosuke Osuka
1
1国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
pp.725-727
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn147060725
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はじめに
少子高齢社会が加速する中,健康寿命の延伸は,わが国の医療・保健・福祉政策において重要課題の一つである.その中核概念として位置付けられているのが「フレイル」である.フレイルとは,加齢にともなう生理的予備力の低下により,軽微なストレスに対する恒常性が脆弱化した状態をさし,転倒,要介護,死亡などのイベントリスクを高めることが知られている.
フレイルの予防・改善には,「運動」,「栄養」,「社会参加」の三本柱による包括的な対策が推奨されている1).栄養状態や食習慣は,「運動」や「社会参加」と相互に関連するため,管理栄養士には「栄養」の専門性に加え,フレイル高齢者の生活全体を見通すジェネラリストとしての視点も求められる.たとえば,地域のフレイル高齢者に対して栄養プログラムを提供する際には,組み合わせる運動プログラムの安全性,効果,さらには地域における実施可能性などを総合的に考慮した支援が求められる.
ラジオ体操は,学校,職場,地域社会など幅広い場面で実践されてきた日本の伝統的な運動プログラムであり,公衆衛生上優れた社会的資源である.特別なトレーニング機材を必要とせず,いつでも・誰でも・どこでも実践できるため,運動以外の専門職でも導入しやすいメリットがある.しかし,(意外にも)これまでラジオ体操の健康効果や安全性は学術的に検証されていなかった.
本稿は,ラジオ体操の有効性や安全性を検証した臨床研究2)を紹介したうえで,施設や地域の実践現場においてラジオ体操を活用するうえでの注意点について論じる.

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