FORUM 戦争と医学・医療⑧
日本医学会と医学医療倫理のあゆみ
-――日本医学会『未来への提言』によせて
西山 勝夫
1
1滋賀医科大学名誉教授
pp.201-203
発行日 2025年1月11日
Published Date 2025/1/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292020201
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日本医学会「未来への提言」
日本医学会は2022年に創立120周年記念事業を行った.その一環として,同年4月2日に開催されたシンポジウム「未来への提言」を経て,発表された『未来への提言』1)がある.同書p.72には,
「わが国も,これまで医学・医療の名において,人々に大きな犠牲を強いた過去を持つ.戦時中に石井機関と七三一部隊で中国人やロシア人等を対象とした非人道的な人体実験が広範に行われ,この研究には当時の日本の医学界をリードしていた大学教授たちが多く参加していた事実がある.その後も,ハンセン病患者に対する強制隔離や優生手術を行った事件や薬害エイズ事件等の重大な事例,さらには「旧優生保護法」に象徴される生命倫理原則や基本的人権,インフォームド・コンセントの蹂躙が起こった.私たちは,こうした過去の過ちに学び,将来にわたって非倫理的な状況がふたたび起こることのないよう,私たち自身の倫理を確固たるものとし,時には流れに抗うことも医学に携わる者の責務であることを改めて認識する.
日本医学会は,医学・医療の進歩が,患者と社会の理解および信頼と合意を得て,社会の基本的価値と倫理規範に合致した形で提供されるよう,不断の努力を払うことを決意し,現在そして未来の医学・医療が,患者と人々に大きな幸福と福祉をもたらすことを希求する.」
という,日本医学会史上はじめての表明(以下,「提言」)がある.
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