頭部外傷に対する神経集中治療

Neurocritical care for traumatic brain injury

神経集中治療とNeurocritical Care Society

　神経集中治療（Neurocritical Care）は，生命の危機に瀕する急性神経傷病患者を対象とし，脳損傷を最小限に留め転帰改善をはかる専門領域である．神経学と集中治療に精通した専門医（neurointensivist）が，臨床所見に加え各種の侵襲的・非侵襲的モニタリングを駆使して頭蓋内環境を最適化し，関連診療科と多職種との連携のもと患者の治療を統括する^1）．2002年，米国に設立されたNeurocritical Care Society（NCS）は2004年に機関誌を創刊し，2005年に米国神経学会の一分野として正式に認定され，2006年に専門医のための2年間のコア・カリキュラムを策定した^2）．研修と専門医制度が確立し，全米の主要な病院には従来のICUとは別にNeuro-ICUが設置され，神経集中治療はめざましい発展・普及を遂げつつある．神経集中治療のネットワークは全世界に及び，わが国では2013年から神経救急学会がNCSのグローバル・パートナーとして正式に学術提携を結んでいる^3）．