連載 この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症
はじめに
大西 健児
1
Kenji OHNISHI
1
1鈴鹿医療科学大学看護学部看護学科
pp.1145-1145
発行日 2021年3月20日
Published Date 2021/3/20
DOI https://doi.org/10.32118/ayu276121145
- 有料閲覧
- 文献概要
わが国では寄生虫症の患者数が少ないことから,一般社会のみならず医療界においてさえ,寄生虫症が話題になることが少ない現状にある.しかし,1950年代後半~1960年代前半頃まで,日本には多数の寄生虫感染者が存在していた.遺跡の便所跡遺構の土壌分析や明治から昭和30年代後半頃までに出された調査研究報告書によれば,日本の主要な寄生虫は回虫や鉤虫のようないわゆる土壌媒介線虫類であった.その後,化学肥料の使用,上下水道の整備,水洗トイレの普及などにより,日本では寄生虫感染者が激減したという報告をたびたび目にするようになった.しかし,減少した寄生虫は上記の土壌媒介線虫類であって,アニサキス症や日本海裂頭条虫症などは新鮮魚介類の輸送システムの発達につれ,検出件数が増加しているとの報告がなされている.日本で感染した赤痢アメーバ症の患者は珍しい存在ではなく,日本国内でも免疫不全と関連するトキソプラズマ症やクリプトスポリジウム症の患者に遭遇することもある.また,特定の地域と関連する寄生虫症として,北海道では現在でもエキノコックス症(多包虫症)の新規感染者が発生している.
Copyright © 2021 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.