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特集 難聴の治療――再生医療から人工聴覚器まで
鼓膜再生療法
Eardrum regeneration treatment
金丸 眞一
1
Shin-ichi KANEMARU
1
1公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院耳鼻咽喉科難聴・鼓膜再生センター,医療法人社団淀さんせん会金井病院耳鼻咽喉科部長
キーワード:
鼓膜再生療法
,
再生環境
,
患者選択
Keyword:
鼓膜再生療法
,
再生環境
,
患者選択
pp.678-682
発行日 2021年2月13日
Published Date 2021/2/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27607678
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世界に先がけてわが国で開発された鼓膜再生用剤リティンパ®が,2019年9月に承認され同年11月それを用いた鼓膜再生療法が健康保険適用となった.鼓膜再生療法はin situ tissue engineeringの概念に立脚し,組織再生に必要な3つの要素である細胞・足場・調節因子を良好な再生環境に置くというコンセプトで開発されたものである.細胞増殖の足場にゼラチンスポンジ,調節因子としてトラフェルミン(遺伝子組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子)を用い,鼓膜再生の細胞源である組織幹細胞/前駆細胞増殖のtriggerとして鼓膜穿孔縁の新鮮創化を行い,フィブリン糊で表面を被覆し再生環境を整えることで鼓膜再生を可能にした治療である.適切な患者選択と鼓膜穿孔周辺の新鮮創化を行うだけで,自分自身の鼓膜が再生され,理想的聴力改善が得られるきわめて低侵襲な治療である.今後,鼓室形成術の対象となるようなより重症な患者に対しても適用拡大を進める方針である.
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