案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
手掌多汗症の手術療法における代償性発汗の症例
向井 秀樹
1
1東邦大学医療センター大橋病院皮膚科
pp.884-885
発行日 2026年10月1日
Published Date 2026/10/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000004710
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・20歳代,男性.思春期より手掌の多汗に気づく.夏場や,緊張した際に手が汗で濡れ,手書きのノートまで濡れるほどである.ただし夜間の発汗はない.手汗が不快に思われるのではないかと,他人と握手ができない.家族に多汗症の人はいないため,ストレスを感じても相談する相手がいない.塩化アルミニウム外用は有効であったが,手汗の根本的治療を求めて,ネット検索で診療を予約した.
・初診時,担当医は手掌多汗症の病態や重症度分類について資料をもとに説明し,手汗に関するいくつかの質問をしながら,現在行われている手掌多汗症の治療法についても話をする.
・担当医は手掌多汗症であると診断し,既存の塩化アルミニウム外用など保存療法は効果が一時的で,永続的な効果を希望するなら胸腔鏡下胸部交感神経切断術(endoscopic thoracic sympathectomy:ETS)が一番よい.代償性発汗は90%に生じるが,手術してよかった人は100人中96人で手術を受けないほうがよかったという感想は数名のみだったと説明(医師側の調査結果であり出典不明)し,同意書をとる.
・日帰りでETSを施行,手汗は治まるも背部,胸部,大腿部からいままで経験したことのない発汗が生じる.
・術後半年間は発汗不安定と説明されていたが,1年経っても改善せず受診.10%塩化アルミニウム外用とプロバンサイン内服が処方されるも,まったく効果がなかった.
(「経過」より)
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