- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
『皮膚病診療』は洋名をpractical dermatologyとしている.つまり実践的な皮膚科学,日常診療に役立つ専門誌をコンセプトとして編集を重ねてきた.先人のeditorが築いてくださった企画を継承しつつ,新しい“実践的”な内容を盛り込みながら,40年以上にわたり刊行を続けている.さらに小誌には19名のadvisorがおり,編集方針や企画について,しばしばご意見をいただいている.今回は「診断に苦慮した症例」をテーマとして,それにふさわしい症例の執筆を各advisorの先生方に,一任する形でお願いした.
「○○だと思ったら××であった症例」は,学会発表の機会も多くないが,診断の過程や最終的な判断の根拠を述べていただくことは,一般の臨床医にとっても役に立つ内容である.酒皶性皮膚炎だと思ったらCushing症候群だった,強皮症だと思ったらWerner症候群だった,BCG接種後の結核疹だと思ったら自家感作性皮膚炎だった,Sweet病だと思ったら水痘再感染だった……などなど,貴重な症例が報告された.また上皮性およびリンパ腫を含めた間葉系腫瘍については,間葉系腫瘍だと思ったらブルーリ潰瘍だった,有棘細胞癌(squamous cell carcinoma:SCC)だと思ったらメトトレキサート(MTX)関連リンパ腫だった,サルコイドーシスだと思ったら皮膚T細胞性リンパ腫(cutaneous T cell lymphoma:CTCL)だった,脂漏性角化症のみだと思ったら基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)のcollisionだった……などなど.当然ながら,皮膚生検をして病理組織をしっかりみることの重要性を再認識した.読者のみなさんにぜひ完読していただきたい,年頭にふさわしい号となったと思う.
Copyright © 2022, KYOWA KIKAKU Ltd. All rights reserved.