案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
乳房外Paget病の紹介遅延例
向井 秀樹
1
1東邦大学医学部
pp.1144-1145
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002689
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・40歳代男性.6カ月前から陰囊に軽度の痒みを伴う皮疹が出現,改善しないため受診.初診時現症は,表面が乾燥し色素脱失を混在する紅斑局面を認める.真菌検査は陰性.乳房外Paget病を考え説明するも,発症年齢が若く,白斑を伴う湿疹と診断.プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル軟膏を処方.改善しないようなら再診を促す.
・外用薬でいったん痒みが消失するも,初診より1年後に痒みが再燃したと再診.陰囊部に前回と同様な痒みを伴う紅斑局面を認める.前回と同様の外用薬を処方.再発したらすぐに受診するように説明.
・3年後に再診.外用薬が切れると再び痒みが出現.搔破によるびらんを伴っている.真菌検査は陰性.乳房外Paget病を強く考える.患者は多忙を訴え,同様の外用薬を処方する.次回再診時用として上級施設への紹介状を作成する.
・患者の都合で,初診より4年後に他の皮膚科を受診.乳房外Paget病を疑い,上級施設を紹介受診した.
・上級施設での皮膚生検により,肛門周囲に達する乳房外Paget病と診断される.広範囲の腫瘍全摘術と人工肛門の造設術を受ける.
(「経過」より)
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