私の視点
膠原病が専門の皮膚科医
長谷川 稔
1
1福井大学医学部皮膚科学
pp.855-855
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002610
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皮膚科学だけでも膨大な学問であり,皮膚疾患のすべてを完璧に診療できる皮膚科医は皆無と思われる.それなのに私は,なぜ皮膚科医でありながら,膠原病を専門にしているのだろうと思うことがときどきある.もっと皮膚科医らしく,皮膚だけの疾患を専門にしたほうが,診療も研究もその領域で一人前になることができるかもしれない.学生や研修医も,膠原病が本当にやりたければ皮膚科でなく膠原病科に進むことが多いだろう.皮膚疾患に興味があるが,膠原病が専門の教授のもとで,重症の膠原病患者の主治医にはなりたくないと思う人もいるかもしれない.
皮膚科医が決して見逃してはいけない疾患として,抗MDA-5抗体陽性の皮膚筋炎は代表的なものである.ご存知のように本抗体の陽性例は,筋炎の症状や検査異常がほとんどみられない無筋症型皮膚筋炎が多い.このため,患者さんが最初に気づくのは皮膚症状であり,皮膚科を最初に受診されることが多い.典型的な皮膚筋炎にみられるヘリオトロープ疹,Gottron徴候,爪囲紅斑,爪郭部毛細血管拡張に加え,本抗体陽性例では逆Gottron徴候(図1a)や潰瘍(図1b)などの血管病変などがみられることから,皮膚症状からもかなりの確率で抗体を特定できる.皮膚症状から発症早期に診断してCTを撮影し,間質性肺炎を発見して迅速に強力な免疫抑制療法を開始すれば予後は悪くない.一方で,皮膚症状からの診断が遅れれば,間質性肺炎が急速に進行し,短期間に命を失いうる.皮膚科医の腕のみせ所であり,診療の醍醐味である.
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