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日本乾癬学会学術大会の開催時期に合わせて今年も9月号の特集テーマは乾癬である.乾癬に関連する論文は他誌でも多数出ているのですでに出尽くしたかもしれない,という心配は杞憂であり多数の症例を投稿いただいた.
「Topics」では,コロナ禍における乾癬診療を小宮根真弓先生に概説いただいた.実臨床で生物学的製剤を使用中の乾癬患者さんから投与継続についての質問を受ける機会は多く,参考にしていただきたい.「展望」では山崎小百合先生に,乾癬の病態をアトピー性皮膚炎と対比して,主に制御性T細胞の観点から解説いただいた.昔から乾癬とアトピー性皮膚炎はTh1,Th2タイプの両極端にある疾患として知られており,そのため両者の合併はまれと考えられてきた.両者の新しい治療法として,複数のJAK阻害薬が上市・開発中であることは最近の話題でもある.乾癬に対してバイオ製剤での加療中にアトピー性皮膚炎が誘発されたという報告もみられる.では逆に本邦で現在使用されているデュピルマブで乾癬が誘発されることはどうかと思い調べてみると,すでに結構な数が報告されている.IL-4がTh1/Th17を負に制御しておりデュピルマブでIL-4を抑制するとTh1/Th17へシフトするという推察もある.サイトカインバランスによる可能性が考えられ,いわゆるparadoxical reactionの病態にも通じるものがありそうである.また,乾癬のまれなタイプである乾癬性紅皮症も取り上げている.乾癬はTh1(いまはTh17)タイプの疾患であるのに,Th2タイプの紅皮症へシフトするメカニズムは以前から不思議だったが,少しずつこのあたりの病態も新しい知見が出されつつある.
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