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乾癬の免疫学的病態
本田 哲也
1
1京都大学 大学院医学研究科皮膚科学
キーワード:
乾癬
,
樹状細胞
,
免疫記憶
,
T細胞
,
Interleukin-17
,
腫瘍壊死因子アルファ
,
Interleukin 23
Keyword:
Dendritic Cells
,
Immunologic Memory
,
Psoriasis
,
T-Lymphocytes
,
Tumor Necrosis Factor-alpha
,
Interleukin-17
,
Interleukin-23
pp.550-556
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.24733/J01268.2016271480
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乾癬は世界人口の約1~2%が罹患しているとされる,非常に頻度の高い慢性炎症性皮膚疾患である.乾癬はその臨床像から大きく5つに分類されるが,尋常性乾癬,あるいは局面型乾癬と呼ばれる病型が約90%を占めており,厚い鱗屑を付着した境界明瞭な紅斑が特徴的臨床像をとる.乾癬の病態理解と治療は,基礎的知見より臨床的知見・偶然が先行し,それをきっかけに大きく病態理解が進歩したという極めてユニークな経緯をもつ.乾癬は病理組織学的に著しい表皮肥厚と表皮内好中球浸潤を認めることから,表皮細胞や好中球の機能制御異常がその中心的病態と長年考えられていた.しかし,1970年代からは,T細胞機能抑制薬であるシクロスポリンが乾癬皮疹を劇的に改善したというMuellerらの報告をきっかけに,乾癬はT細胞の関与する疾患であると考えられるようになった.シクロスポリンを乾癬患者に用いた理由は,乾癬治療の目的ではなく,関節リウマチに対するシクロスポリンの治験に,関節症性乾癬の患者が含まれていたためであった.その後,T細胞の活性化阻害を目的とした生物学的製剤が乾癬治療に試みられ,一定の病態改善効果が発揮された.このことから乾癬病態へのT細胞の関与はさらに疑いのないものになったが,それらのT細胞阻害薬は効果・副作用の観点から十分満足のいくものではなかった.1990年代に入りVitamin D3製剤が新たな治療法として登場したものの,依然,非特異的免疫抑制・抗炎症治療にとどまっており,乾癬の病態特異的な治療・その病態形成メカニズムは不明のままであった.(「はじめに」より)
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