特集 検査・処置・手術の合併症:予防と対策
手術・治療
総排泄腔遺残症
黒田 達夫
1,2
Tatsuo Kuroda
1,2
1神奈川県立こども医療センター
2慶應義塾大学小児外科
pp.1220-1223
発行日 2023年11月25日
Published Date 2023/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000639
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はじめに
総排泄腔遺残症は器官原器形成期にあたる胎生5~8週ごろの尿直腸中隔形成,Müller結節とMüller管癒合などの発生過程の異常により起こり,泌尿・生殖系と消化器系が分離する以前の総排泄腔が遺残する形成異常である1)。会陰・肛門にかけて総排泄腔の出口にあたる1孔のみで総排泄腔に固有尿道,膣,直腸が合流した共通管を形成し,時にいずれかの合流部の閉塞を伴う。外科的観点からは,尿道,膣,肛門の機能再建が必要になる。古典的には腹仙骨会陰式に総排泄腔(共通管)から膣,直腸を切離し,共通管を尿道に流用して会陰と肛門を形成する方法が取られたが,Peña2)は尿道と膣を一体にして授動するtotal urogenital mobilization(TUM)を報告し,さらに近年ではpartial urogenital mobilization(PUM)3)による修復が多く行われるようになった。一方で総排泄腔遺残症の表現型は多様で,固有尿道と共通管の合流形態や三管合流部の高さはさまざまで,TUMやPUMにより修復できない症例は少なくない。術後にさまざまな問題を残すことが多く,思春期からAYA世代にかけて外科的にこれらの問題の解決が求められることが多い。
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