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はじめに
先天性胆道拡張症(以下,拡張症)は1852年Douglasの初治療例の報告以来,小児の閉塞性黄疸疾患として認識されるようになった。一方,膵・胆管合流異常(以下,合流異常)は1906年にArnoldsにより剖検例の拡張症に合併した形成異常として記載された1)。しかし,合流異常が拡張症の病態の中心として注目されるようになったのは,1975年に徳島大学の古味が放射線科医Babbittの論文を「手術」に紹介して以降である2)。Babbittは1969年,術中造影所見から合流異常が拡張の原因である可能性を指摘した。同じころの1977年,岡山大学(のち香川医科大学)の戸谷はAlonso-Lejのcholedochal cyst分類を拡充してAm J Surg誌に報告し,これがTodani分類として世界に普及した3)。東京大学の土田が1971年にSurgery誌に報告した肝内胆管に拡張が及ぶ拡張症をⅣ-A型として追加した意義は大きい。戸谷は本分類で合流異常を考慮しなかったため,1995年に合流異常を加味した分類に改定した。合流異常研究会は古味が1978年に小児外科学会中に「夜の会」として誕生させた。その後,小児外科のみならず,合流異常に興味をもつ消化器外科(以下,消外),消化器内科(以下,消内),病理学の研究者を巻き込んで熱い議論が交わされた。拡張症は東洋人に多く,また,1969年に東京女子医科大学消内の大井により開発された内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)4)が日本で普及した時期と重なり,日本の研究は世界をリードした。本研究会の成果は藤田医科大学消外の船曳の編集で,20周年記念誌『膵・胆管合流異常―そのConsensusとControversy』5),その後,学術委員会の執筆編集で40周年記念誌「エピソードで綴る 膵・胆管合流異常の40年」(2017)として出版された。40周年記念誌は著作権の都合上会員限定配布で,目次までしかホームページで公開されていないので6),その基礎的内容を「合流異常/拡張症アトラス」として2021年に一般公開した7)。
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