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これまでのオンライン診療
コロナ禍前のオンライン診療は大きな制約があり,プライマリ・ケアの分野で活用するには困難が大きかった。まず,対象患者は「特定の管理料等の算定対象となる患者」,「在宅自己注射指導管理料を算定している患者」,「慢性頭痛の患者」に限定されていた。そして,オンライン診療を導入するにあたっては,対面診療を直近3か月以内に毎月行っていることが必要であり,対面診療とオンライン診療を組み合わせた診療計画を作成し,患者の同意を得なければならなかった。そして,連続する3か月の間に対面診療を1回は行わなければならないという条件もついていた。オンライン診療を行うにあたっては,医療機関側は事前の届け出と,医師については厚生労働省(厚労省)の定めたe-ラーニングの受講も必須となっている。ここまでの手間をかけたにもかかわらず,1回の診療で算定できるものは,オンライン診療料(71点)であり,費用対効果の観点からも,よほどの意義を感じなければ導入することはないというのが,現場の感覚だったと思われる。遠方の大学病院などへ長時間かけて通院する患者に関しても,遠隔医療は有用なツールであると思われたものの,連続する3か月の間に対面診療が1回も行われないとオンライン診療料を算定できないという条件があるため,拡大することはなかった。このような施策となったのも,遠隔医療の安全性に対する危惧が大きかったからと考えられる。対面診療に比べ得られる情報が少なく,医師側の指導なども患者側にしっかり伝わるのかという問題もあった。しかし,近年スマートフォンやタブレットをはじめとした情報通信機器の発達は著しく,また後述するオンライン診療を実際に触れ,その有用性を実感した医療者が増えることで,この危惧については,改めて再検討されると思われる。
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