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コロナ禍の子どもたち
感染拡大に伴い,突然の休校や外出自粛などにより子どもたちはこれまでにない非日常での生活にさらされた。また,すでに家族内不和,養育不全,家族機能の脆弱性をもつ家族においては,家庭内暴力や子ども虐待の増加が国際的に大きな問題になっていることも報道されている。さらに国連の事務総長は2020年9月5日夜,新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対策の一環に「DV・虐待対策」を盛り込むよう世界各国の政府にその対応を求めた。このような状況のなか,子どもたちは,通常であれば当然に体験できていた,学校に行き友だちとおしゃべりをしたり,外でスポーツをしたり,遊びに行ったり,というあたりまえの生活が突然失われた。卒業式や入学式,修学旅行や部活動をはじめ,楽しみにしていたさまざまなイベントが中止になった学校は少なくない。自身や家族が感染し自宅療養や家族の入院や,そして死別という体験を余儀なくされた子どもも存在する。2020年に成立した成育基本法は,「成育過程にある者の多様化し高度化する需要に的確に対応した成育医療等の切れ目ない提供」を明記している。その理念として,胎児期から若年成人にいたる者に必要な成育医療やそれに関連する保健・教育・福祉に関する具体的施策を遂行すること,障害の有無にかかわらず,すべての子どもの成育に必要な施策を具体的に提言し,効果的に運用することこそが小児科医の責務であると強調している。この成育基本法は子どもを権利の主体として位置づけ,子どもの成育に必要な成育環境を守るべき理念が幅広く提示されている。この成育基本法,そしてその理念の中心となった子どもの権利条約をベースに,コロナ禍の子どもたちの現状を考察し,そして今こそ,小児科医としての子どもアドボカシーの実践につながることを真に期待し以下に記す。
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