特集 周産期の薬物療法 update 2025 産科編
各論:周産期感染症
細菌性腟症
鈴木 俊治
1
SUZUKI Shunji
1
1日本医科大学産婦人科
pp.952-955
発行日 2025年8月10日
Published Date 2025/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri0000002252
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はじめに
細菌性腟症とは,腟内の乳酸桿菌(Lactobacillus spp.)が減少して腟分泌物や腟内性状に異常をきたした状態で,全身性の粘膜免疫異常の一つとして,腟細菌叢の多様性低下(dysbiosis)に始まる感染性疾患とされている1,2)。すなわち歯周病などと同様で,全身性の粘膜免疫異常の一つとも考えられている3)。腟内は,乳酸桿菌が腟粘膜細胞内のグリコーゲンを分解して乳酸を産生することで酸性(通常pH:3.5~4.5程度)に保たれ,また,妊婦は非妊婦と比べて腟内乳酸桿菌の検出率が高く,この自浄効果によって腟から子宮内に及ぶ上行性感染を予防しているが,この状況が何らかの理由で破綻すると他のさまざまな細菌が繁殖しやすい状況となり,腟上皮が障害されて細菌性腟症を発症する。

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