特集 周産期メンタルヘルス:最新事情
各論:産科編
産後ケア
齋藤 知見
1
SAITO Tomomi
1
1総合母子保健センター愛育クリニック周産期メンタルヘルス科,愛育産後ケア子育てステーション
pp.847-850
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002221
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はじめに
産後ケア事業は令和元年(2019年)母子保健法の改正により法定化され,令和3年(2021年)から実施が市町村の努力義務となった。事業目的は「助産師等の看護職が中心となり,母子に対して,母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに,母親自身がセルフケア能力を育み,母子の愛着形成を促し,母子とその家族が,健やかな育児ができるよう支援すること」である。具体的には,母親の身体的回復のための支援,授乳指導や乳房ケア,話を傾聴するなどの心理的支援,具体的な育児指導,家族などの関係調整,地域の社会的資源の紹介などである1)。ガイドラインが定めている対象者は「産後に心身の不調又は育児不安等がある者」とする一方で,除外者は「心身の不調や疾患があり,医療的介入の必要がある者(ただし,医師により産後ケア事業において対応が可能であると判断された場合にはこの限りではない)」とあり,メンタルヘルスの不調を抱えた者の利用可否や目的については曖昧である。精神科病棟での治療適応はないが,臨床的に子育てに支障をきたしている母親は多く,産後ケア施設ではメンタルヘルスの専門的な介入を要するケースを多く経験する。

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