増刊号 周産期診療のための病態生理
[産科編]
羊水の病態生理
羊水はどのように維持されるか。羊水産生・吸収のメカニズムは?
野﨑 紀子
1
,
佐治 正太
2
,
長谷川 潤一
2
NOZAKI Noriko
1
,
SAJI Shota
2
,
HASAGAWA Junichi
2
1吉本レディースクリニック産婦人科
2聖マリアンナ医科大学産婦人科学
キーワード:
羊水
,
羊水過少
,
羊水過多
Keyword:
羊水
,
羊水過少
,
羊水過多
pp.269-272
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001293
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羊水の存在
胎児は胎内では羊水中で発育している。羊水の存在は胎児発育にとって,物理的にも化学的にも重要である。羊水の存在により子宮内に空間ができ,胎児への外からの衝撃を吸収している。また,胎児発育に際し,運動スペースを確保することにより癒着,拘縮を防止し,筋骨格系発達を促す。胎児の呼吸様運動により横隔膜筋,胸郭,肺胞の形成を促し,羊水を嚥下することにより消化管を成熟させる。さらに,周囲の温度変化に対する緩衝作用により,胎児の体温を一定に保っている。母体に対しても,胎動による臓器痛を軽減している。さらに,分娩時には子宮収縮による子宮内圧上昇を均等に分散し,胎児や臍帯,胎盤への直接的圧迫を防ぐ。また,胎胞形成により子宮頸管を開大させ,破水により産道を滑らかにし,胎児の産道通過を容易にするだけでなく,羊水が子宮内から腟内に流出することで,産道からの上行性感染を防いでいる。
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