特集 細菌,ウイルス,真菌―微生物学のパラダイムシフト―
【総論】
マイクロバイオームと生活習慣病の関連
大坂 利文
1
Toshifumi Osaka
1
1東京女子医科大学医学部微生物学免疫学分野
キーワード:
生活習慣病
,
腸内細菌
,
腸内細菌代謝産物
Keyword:
生活習慣病
,
腸内細菌
,
腸内細菌代謝産物
pp.252-255
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000002025
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はじめに
体内にありながらも外界とつながる腸管は,外来の病原体を含めた異物に対する粘膜免疫系を発達させることで生体機能の恒常性維持に深く関与している。とりわけ,腸管内に存在している腸内細菌叢は,宿主の免疫系の発達・制御やエネルギー代謝システムに関与し,ヒトの健康や疾病に大きな影響を与えている。腸内細菌叢を構成する千種類以上にも及ぶ細菌種は系統分類学的に多岐に渡り(Actinomycetota門,Bacteroidota門,Bacillota門,Pseudomonadota門,Fusobacteriota門,Verrucomicrobiota門など),その存在量は宿主細胞の総数に匹敵する。腸内細菌叢を構成する細菌種は,腸内における栄養学的要因,化学的要因(酸素濃度,pH),生体由来成分(胆汁酸,消化酵素,粘液,抗菌物質,抗体など)の影響を強く受けることから,腸内細菌叢のバランスは食習慣や健康状態によって変容する。現在までに,高速シーケンス解析技術を活用した分子生態学的アプローチによって,さまざまなヒト疾患やマウス病態モデルにおいて腸内細菌叢の変容が明らかになりつつある。実際,腸内細菌叢のバランス異常は,腸管粘膜免疫系の変調を誘引するだけでなく,腸管内外の組織における炎症応答や細胞変性にまで波及し,生活習慣病の病態形成に関連している。本稿では,生活習慣病と関連する腸内細菌叢の構造や代謝産物の特徴を概説する(図1)。

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