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1 COVID-19の病態
2019年末に武漢から報告されて以来,severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)による感染症coronavirus disease(COVID-19)は人類社会で2025年4月現在,類型で709万人を超える死者を数えるまでになっている1)。人に感染症を起こすコロナウイルスは2025年現在7種類ある。風邪症候群の原因となるコロナウイルスから2003年に広州から現れ,その姿を消したSARS-CoVや中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus:MERS-CoV)まで臨床症状はさまざまである。このウイルス感染症の特徴としては,無症状者が多いこと,無症状者からの感染伝搬が無視できない割合であることが流行拡大の大きな要因となっており,これはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン接種が少なくとも複数回行われた,または既感染者が大半となった2025年でも同様である。臨床的には,咽頭痛や微熱などウイルスの侵入した部位の症状のみで軽快する“風邪症候群”から,ウイルス性肺炎まで幅があることが特徴である。ウイルス性肺炎を起こした場合は治癒に伴う過程でacute respiratory distress syndrome(ARDS)を起こし,呼吸障害が残る。早期の段階ではウイルス自体による肺障害がメインとなり,それに伴い低酸素血症をきたし,その後そこに宿主の免疫反応による炎症がかぶさってきてやがてARDSを起こしてくるといえる。早期はウイルスが主役,後期は自己免疫反応が主役と考えられている。多くはこのようにウイルスが排除され,治癒または呼吸不全により死に至るが,一部の免疫不全患者(多くはB Cell depletion therapy中の患者や,CAR-T療法中の患者など)では慢性SARS-CoV-2肺炎となる2)。

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