特集 IgEをめぐる諸問題 アップデート
Ⅹ. 抗IgE抗体について
山口正雄
1
Masao Yamaguchi
1
1帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授
pp.1696-1700
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201612090
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IgEが体内でどのような機能を受け持っているのかについて,今まで特に即時型アレルギーの即時相の観点から解析が進められてきたが,慢性アレルギー疾患(気管支喘息など)の慢性病態への関与は強くないとする考えが以前は主流であった。抗IgE抗体(オマリズマブ)の登場は,この考え方を一変させた。抗IgE抗体を投与した結果,今まで他の薬剤を総動員しても抑えられなかった喘息症状や増悪が改善することから,慢性の気道アレルギー病態においてIgEが深く関与していることが明らかとなった。さらに,喘息患者に合併するアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)や好酸球性副鼻腔炎,好酸球性中耳炎にも効果がみられることが示されている。従来IgEやアレルゲンとは無関係と考えられていた慢性じんま疹に関しても抗IgE抗体は承認審査段階である(欧米では既に認可されている)。このように,抗IgE抗体はヒトの疾患においてIgEが極めて重要であることを明らかにしてきたが,その理論的根拠や病態の考え方が後追いで再構築を進めている状況と考えられる。