Japanese
English
特集 消化管感染症の発症メカニズム
7.ノロウイルス
Mechanism of norovirus infection in gastrointestinal tract
片山和彦
1
Katayama Kazuhiko
1
1国立感染症研究所ウイルス第二部第一室 室長
キーワード:
ノロウイルス
,
感染様式
,
ウイルス複製
,
細胞毒性
,
病原性
Keyword:
ノロウイルス
,
感染様式
,
ウイルス複製
,
細胞毒性
,
病原性
pp.82-90
発行日 2016年8月25日
Published Date 2016/8/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201609082
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ヒトに感染するノロウイルス(Human norovirus:HuNoV)は冬季に流行する感染性胃腸炎や食中毒の原因ウイルスのひとつとして知られている。全世界のHuNoV胃腸炎患者数は年間数百万人に達し,下痢性疾患の約半数以上をノロウイルス感染者が占めると言われている。しかし,HuNoVは株化培養細胞で増殖させることができず感染動物モデルが存在しないことなどから,HuNoVの研究は困難をきわめている。近年,ウイルス様中空粒子(VLP)と結合する組織血液型抗原(HBGA)の発見,リバースジェネティクスシステムの実現,X線構造解析,クライオ電子顕微鏡による粒子構造の解析,ヒトオルガノイド技術の開発などにより,HuNoV研究の最大の障壁であった株化培養細胞での増殖,感染モデル動物の開発への扉が開きつつある。これにともない,HuNoVの細胞への感染機構,HuNoVワクチン開発など,HuNoVの研究は急速に進歩しはじめた。しかしHuNoVが,ヒト腸管のどの部分に感染しているのか,なぜ,嘔吐下痢などの胃腸炎症状を発症するのかなどいまだに原因が解明されていない課題が多い。本稿では2016年時点での最新のノロウイルス属のウイルスに関する知見に基づき,ノロウイルス感染症発症のメカニズムに関して著述を試みる。