特集 新しい医療を拓くメカノバイオロジー
2.バイオメカニクスとメカノバイオロジーから見た脳動脈瘤の形成機序と治療法
氏家弘
1
,
加藤宏一
2
,
木附宏
3
1東京労災病院脳神経外科・顧問/ブルースカイ松井病院脳神経外科・顧問
2東京労災病院脳神経外科・部長
3戸田中央総合病院脳神経外科・脳血管内治療科・部長
pp.1435-1440
発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201706063
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動脈分岐部で主流が衝突する分岐部apex近傍は,high shear stressに加えてshearstress勾配が陽性となり,動脈瘤の好発部位となる。血流ストレスに引き続き生じるbiologicalreactionの主役は,NF-κB(nuclear factor-kappa B)の活性化である。Highshear stressによってプロスタグランジン産生酵素であるCOX(cyclooxygenase)-2とNF-κBが内皮細胞で誘導された後,COX-2→ prostaglandin E2→ prostaglandin E2receptor(EP2)→ NF-κBという炎症を増幅する悪性サイクルができ,さらにNF-κBはMCP-1(monocyte chemotactic protein-1)を内皮細胞から放出させ,マクロファージの集積を経時的に増加させ,動脈瘤壁の炎症をさらに長期化させる。NF-κBはremodelingを促進するMMP(matrix metalloprotease)-2, -9の放出も促す。未破裂脳動脈瘤の治療には,NF-κBを制御する必要がある。脂質異常症治療薬であるHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン製剤)は,コレステロール降下作用だけでなく,強力な抗NF-κB作用,抗炎症作用を有するので,未破裂脳動脈瘤の成長予防,破裂予防に使用できる可能性が高い。