特集 最新のがん免疫療法
6.生体内樹状細胞を標的とした多機能性がんワクチンの開発
藤井眞一郎
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1国立研究開発法人 理化学研究所 統合生命医科学研究センター[IMS]免疫細胞治療研究チーム・リーダー/創薬・医療技術基盤プログラムプロジェクト・リーダー
pp.1079-1082
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201604099
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遺伝子変異により発生するがん細胞は,細胞学的に不均一であるが,免疫学的に見ても細胞表面にHLAクラス英分子を発現しているものと欠損しているがん細胞が存在し,免疫回避の一因になっている。このようながん細胞自身の細胞学的多様性が,がんワクチン療法を困難にしている要因と言える。過去に進められてきた治療型がんワクチン療法研究より,有用ながん特異的な抗原の選択と抗原提示細胞としての樹状細胞の機能を利用することが,キラーT細胞の誘導に重要であることは明確になってきた。今後,いかに自然免疫と獲得免疫の両者を動かすかが,重要な課題であると言える。我々は,これまで生体内の樹状細胞を標的として,自然免疫と獲得免疫を誘導し,長期維持する多機能性を有するがんワクチンシステムとして,“人工アジュバントベクター細胞”を考案し,開発研究を進めている。本稿では,この細胞療法について紹介する。