特集 軟部組織の石灰化─ 血管と心臓弁
4.血管石灰化における組織学的・微細構造学的知見─ FGF23/αklotho 軸破綻によるマウス大動脈石灰化
長谷川 智香
1
,
山本 知真也
2
,
本郷 裕美
1
,
宮本 幸奈
1
,
網塚 憲生
1
1北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室
2自衛隊朝霞駐屯地歯科
キーワード:
血管石灰化
,
αklotho
,
血管平滑筋細胞
,
基質小胞
,
骨芽細胞
Keyword:
血管石灰化
,
αklotho
,
血管平滑筋細胞
,
基質小胞
,
骨芽細胞
pp.275-283
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.19020/KB.0000000235
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FGF23 は,おもに骨細胞から産生・分泌されて腎臓の近位尿細管に存在するFGFR1c/αklotho 複合受容体に作用することで,血中リン濃度を調節している.したがって,kl/kl マウスにおいてFGF23/αklotho 軸が破綻すると,高リン・高カルシウム血症を呈し,動脈中膜にメンケベルグ型中膜石灰化が誘導される.その組織病理機序として,血管平滑筋細胞が骨芽細胞様細胞へとtrans-differentiation することで,骨芽細胞と同様に生物学的石灰化が生じる可能性が示唆されている.電顕観察では,骨芽細胞が分泌するような基質小胞様構造物が観察されたが,必ずしも,骨基質石灰化のようにⅠ型コラーゲン線維に基質小胞性石灰化が波及しているのではなく,弾性線維が優先的に石灰化しているように観察された.また,低リン餌をkl/kl マウスに与えると血管石灰化が低下したが,αklotho 遺伝子の発現が若干回復していることから,血中リン濃度の低下,および,αklotho 遺伝子回復の両方の可能性が考察された.
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