機能性消化管疾患-病態の解明と新たな治療
機能性消化管疾患診療ガイドライン Rome基準との比較から 過敏性腸症候群
千葉 俊美
1
,
松本 主之
1岩手医科大学 医学部内科学講座消化器内科消化管分野
キーワード:
有病率
,
予後
,
アルゴリズム
,
診療ガイドライン
,
過敏性腸症候群
Keyword:
Algorithms
,
Prognosis
,
Prevalence
,
Practice Guidelines as Topic
,
Irritable Bowel Syndrome
pp.161-170
発行日 2015年1月20日
Published Date 2015/1/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2015140023
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過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は機能性腸疾患の代表疾患であり,慢性・再発性の腹痛あるいは腹部不快感とそれに関連した便通異常を特徴とする.IBSの有病率は性,年齢,居住地,職業により異なるが,女性で高く加齢とともに低下する傾向にある.病態として,ストレス,腸内細菌・粘膜炎症,神経伝達物質・内分泌物質,心理的異常,遺伝的要因などが関与し,脳と消化管の機能的な関連である脳腸相関(brain-gutinteractions)がIBS患者の病態生理の重要部分を占めている.一方,感染性腸炎後にも発症率が増加し,post-infectious IBSと呼ばれる病態がIBS全体に占める割合は5~25%程度とされる.Rome III基準はIBSの診断に有用であるが,アラームサインに注意した器質的疾患の鑑別,および機能性ディスペプシアや胃食道逆流症などの機能性消化管疾患とのオーバーラップに注意する.治療目標は患者の自覚症状の改善であり,そのためには良好な患者-医師関係の構築が重要である.治療は消化管主体の治療を行う第1段階,中枢機能の調節を含む第2段階,心理療法を行う第3段階に大別される.寛解期炎症性腸疾患の50%弱がIBSの診断基準を満たし,IBSから炎症性腸疾患への移行も少なくない.さらに,IBSでは消化管外の身体疾患がQOLをより低下させる要因となる.
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