発行日 2016年9月10日
Published Date 2016/9/10
DOI https://doi.org/10.19020/J01864.2017004367
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
50代男。小学生の頃に常染色体優性多発性嚢胞腎と診断され、腎機能低下が緩徐に進行し、51歳時点で血清Crが1.33mg/dLとなり、当院を紹介受診した。以降、当科外来で経過観察し、腎機能は横ばいで推移していた。53歳時、腹痛・発熱を主訴に近医を受診し、感染性腸炎と診断され、総合感冒薬や整腸剤で加療された。腹痛はいったん改善傾向を示したが、近医受診後5日目に再燃し、当院救急外来を受診した。諸検査の結果から、腎盂腎炎や嚢胞出血、嚢胞感染の可能性が示唆された。入院後に悪寒と発熱が出現し、体温は40℃まで上昇し、嚢胞出血に伴う嚢胞感染が疑われたためシプロフロキサシンの静注を開始した。しかし、解熱せず炎症反応の改善も認められなかったため、起炎菌がキノロン耐性菌である可能性も考慮し、第3病日に抗菌薬をタゾバクタム・ピペラシリンへ変更した。その結果、比較的速やかに解熱し、炎症反応も改善傾向を示した。第3病日に施行した腹部CTでは、入院時検査で右腎盂に認めていた血腫が縮小していた。血液検査上は腎機能障害が悪化していたが、第4病日から改善傾向に転じ、超音波検査上も、入院時検査で右腎盂に認めていた水腎の消失が確認された。その後も抗菌薬投与を継続することで理学所見や血液学的所見も改善し、第12病日に退院となった。
Copyright © 2016, Nihon Medical Center, Inc. All rights reserved.