連載 英語で論文を書くことの効能……学会発表だけじゃダメなんですか?
その5.実験論文と臨床論文との違いは? …①
加藤 順
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1千葉大学消化器内科・千葉大学医学部附属病院内視鏡センター
pp.766-766
発行日 2020年6月20日
Published Date 2020/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000001208
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本連載において「論文を書く」とは,まともな査読のある英文誌への掲載を指します(本誌Vol. 35 No. 3 より).さて,前回は,臨床研究には前向き研究と後ろ向き研究とがあり,前向き研究のほうがバイアスの少ない研究になるけれども,研究する内容によって前向き研究ばかりがエライとは限らない,というお話をしました.どんなclinical question に対し,どのようなstudydesign を組んで研究するのがよいか? を考えるのが臨床研究の第一歩です.前向きRCTがもっともよいと思ったら,その研究計画を考えます.そんな時間もお金もなければ,次善の策として後ろ向きのcase‒control studyをする.理屈ではそういうことですが,実際上,「さあ,研究を始めるぞ!」というときに,そのような筋道をたてて,前向き,後ろ向きstudy を選択する,ということはあまりありません.薬剤の新規開発をする人は,はなから前向きRCT 以外のstudy design は考えませんし,われわれのように,ちょっとした学会発表をあわよくば論文に,などと考える場合,そもそも後ろ向き(retrospective)な研究しか頭に思い描いていないことが多いわけです.なぜそうなってしまうかというと,実は,前向き研究と後ろ向き研究では同じ臨床論文といっても,論文の書き方,いや,それ以前に,ものの考え方がまったく異なるからです.ここでは,実験論文と臨床論文の違いに言及しながら,このことについて述べてみます.
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