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はじめに
著者が母校を卒業し,麻酔科に入局した1982年当時,手術室の医療機器類は現在と比較してかなり粗末なものであった。呼吸音は片耳聴診器による呼吸音を直接聴取,血圧は片耳聴診器を付けて5分ごとのマニュアル計測,聴診器の固定が悪くなると,コルトコフ音が聴取できずに,触診で収縮期血圧だけを記載していた。自動血圧計は2台しかなく,早い者勝ちであった。パルスオキシメータ,カプノグラフィはなく,先輩からは視診,触診,聴診の重要性と,外科医からの情報の有用性について教授された思い出がある。
この時代と比較すれば,現在の医療環境や機器の進歩には目を見張るものがある。医療機器の充実により,詳細な検査や低侵襲の手術などが,大学病院をはじめとする大規模な病院や専門医の常駐する手術室だけでなく,市中の医療現場でも日常的に行われるようになったことは,患者の利便性から考えても喜ばしいことである。
一方で,このような時代を迎えたからこその新たな課題もある。ここでは非挿管下で行われる鎮静について取り上げたい。近年では,消化器内視鏡手術,小児磁気共鳴画像(MRI)検査,心血管インターべンション,歯科インプラント手術などは手術室以外の部署や開業医の診察室において,静脈麻酔の投与における鎮静(以下,静脈内鎮静)で行われることが多い。それらの麻酔管理は,麻酔科医が関わることはまれで,鎮静に精通していない医師や看護師が担当しており,非挿管下で行われている。
非挿管下の安全な鎮静については,重大なアクシデントにつながる無呼吸,低換気をいち早く発見し低酸素血症を予防することが重要である。視診・聴診を行うことが基本であるが,これに加え酸素化のモニターであるパルスオキシメータと呼吸数の連続モニタリングを行うことで,安全性がさらに高まることについてはあまり知られていない。本論文では近年の医療機器の発展と現状に加えて,非挿管下の鎮静時において必要な基本的事項の解説と,パルスオキシメータや複数の呼吸モニターの紹介,またそれらの有用性を示した。さらに,小規模医療機関の歯科インプラント手術室での静脈内鎮静の実態について紹介する。
Safe respiratory monitoring for sedation without intubation is discussed. Inspection and auscultation are essential for early detection of apnea and hypoventilation, which may lead to serious accidents;however, the usefulness of continuous monitoring of the respiratory rate in addition to inspection and auscultation is not well known. All respiratory monitoring devices have their own advantages and disadvantages, and the use of two or more monitoring devices that can overcome each other’s disadvantages would make the diagnosis of apnea and hypoventilation easier. This article shows that the monitoring of oxygenation with a pulse oximeter and monitoring of the respiratory rate by 2 methods, i. e., capnometry and acoustic respiratory monitoring, would make it easier to differentiate between mouth breathing and apnea. Future development of more accurate respiratory monitors is awaited.
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