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ハロタン肝炎は、存在しなかった 危険因子探索のpitfallに陥った世界初の大規模臨床研究
溝部 俊樹
1
1京都府立医科大学 大学院医学研究科麻酔科学教室
キーワード:
Halothane
,
肝炎
,
危険因子
,
輸血
,
臨床研究・疫学研究
Keyword:
Risk Factors
,
Epidemiologic Studies
,
Hepatitis
,
Halothane
,
Blood Transfusion
pp.1249-1255
発行日 2021年11月10日
Published Date 2021/11/10
DOI https://doi.org/10.18916/J01397.2022030018
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危険因子を見つけることで医療の安全性を高める臨床試験の嚆矢は、1966年のNational Halothane Studyである。これにより、当時頻用されていた吸入麻酔薬ハロタンの副作用であるハロタン肝炎は、その複数回使用が危険因子と見なされた。しかし、この試験はハロタン肝炎の存在を明確に否定しており、かつ複数回使用を危険因子とする有意なデータも示していなかった。手術室に漏れ出たハロタンにより医療従事者も肝障害を引き起こすとの風評被害が広まり、ハロタンは市場から一掃され、ハロタン肝炎は歴史の闇に消えた。あらかじめ想定された因子の中からしか危険因子を導き出せない根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)のpitfallに世界初の大規模多施設臨床研究は陥っていた。
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