特集 産婦人科領域におけるレーザー診療の最前線
4.子宮頸部円錐切除術後遺残・再発症例に対する光線力学的療法(PDT)の有用性
馬屋原 健司
1
,
坂本 優
1,2
,
鳴井 千景
1,2
,
原野 尚美
1,2
,
福島 蒼太
1,2
,
田中 忠夫
1,2
,
岡本 愛光
2
K. Umayahara
1
,
M. Sakamoto
1,2
,
C. Narui
1,2
,
N. Harano
1,2
,
S. Fukushima
1,2
,
T. Tanaka
1,2
,
A. Okamoto
2
1公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院婦人科
2東京慈恵会医科大学産婦人科
pp.939-944
発行日 2020年9月1日
Published Date 2020/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001386
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これまでわれわれは,子宮頸部異形成および子宮頸部初期癌に対するPDTの初回治療著効率は約97%と報告し,子宮機能温存治療として有効な治療法であることを示してきた。しかしながら,婦人科領域でのPDTは副作用としての光線過敏症,入院期間などの問題から,普及した治療法には至っていない。
一方,子宮温存療法の標準術式の1つとして子宮頸部円錐切除(以下,円錐切除)があり,多数の施設が選択している。円錐切除はPDT同様,子宮頸癌ⅠA期までの初期癌に対し広く行われる。多くの場合円錐切除により病変は切除されるが,一部の症例に病変の遺残や再発が認められる。遺残・再発症例に対し一般的には再度円錐切除または単純子宮全摘出術が考慮されるが,再度の円錐切除は頸管粘液減少および頸管長短縮を生じることから不妊症や早産を助長する原因となりうる。
今回われわれは,67例の円錐切除後遺残および再発症例に対しエキシマダイレーザーとフォトフリンを使用したPDTを施行し,著効率と治療経過を検討した。症例はCIN3:43例(高度異形成23例,上皮内癌20例),ⅠA1期:19例,CIN2:3例,AIS:2例であった。照射条件は,通常の子宮頸部病変と同条件で行った。PDTを施行した67例中64例にCR(著効率96%)を認めた。PR 2例に対し子宮全摘術を施行した。CIN3のPR 1例には,再度PDTが施行されCRとなった。これまで,33例中15例が妊娠に至り,14例に生児を得た。
以上より,PDTは円錐切除後遺残および再発症例に対しても有効な治療となりうる可能性が示唆された。
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