Ⅰ 各部位の診察 ４．肺野の聴診

小児科の一般外来で最も多く経験するのは，いわゆる「かぜ」であり，そのため他科とくらべて聴診器を使う頻度が高い．一方で多くの若手小児科医にとって，肺聴診を専門的に学べる機会は少なく，wheezesやcoarse cracklesといった副雑音の聴診だけで診察を済ませていることが多いのが現状と思われる．本稿では，その重要度の割に理解されていることが少ないと感じられる正常呼吸音（エア入り）をトピックの中心に取り上げつつ，小児で聴取される頻度の高い副雑音であるwheezesやcoarse cracklesの発生原理や定義，呼吸器系の解剖について取り上げる．身体診察を通じて，解剖学や生理学を復習することの重要性と面白さを共有できれば幸いである．