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Positron emission tomography(PET)の癌検診におけるポテンシャルには早くから注目が集まり,国内でfluorodeoxyglucose(FDG)—PET の癌診療に対する保険適用が始まった2002年4月にはすでに自由診療としてFDG—PET 癌検診(以下,特に断らなければ,PET 検診)が実施されていた。それまでにFDG は大部分の種類の悪性腫瘍で陽性集積を示すという国内外の臨床研究データの蓄積もあったうえ,PET が高度な科学技術により実現した画像検査手法であるという先進性や,副作用や苦痛を伴わず全身を一度に調べることができるという利便性が,人々に大いにアピールし,それまでは無かった革新的な検診手法として社会に受け入れられた。一方で,ごく微小な癌病巣も漏れなくみつかる万能な検診なのではないかという過大な期待も一部にあったかもしれない。その後,2006 年3 月に国内の有力施設でのPET 癌検診データに関する新聞報道があって,PET では,癌の85%が検出できなかったとのセンセーショナルな記事であったことから,PET 検診による癌の発見率が当時一般に予想されていたよりも低いのではないかとの波紋が広がり,PET 検診に対する一般社会や関係者の考え方に少なからぬインパクトを与えた。PET 検診に対する熱が急激に冷めたという見方もあった。そのような癌検診手法としてのPET の毀誉褒貶はあっても,癌診療全体の中ではいったん癌が確定した患者においてPETは病期診断,再発診断における不可欠な手法として定着して行った。さらに,PET 自体の技術革新が進み,PET/CT 複合装置が普及,高精細画像技術が導入,乳房専用PET やPET/MRI 装置が登場し,これらの新しい技術が検診の場でも用いられるようになった。このような新機軸によりPET検診への期待が新たに膨らんでいるのが最近の状況である。
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