特集 高度進行消化器癌に対する手術
Ⅰ 上部消化管 2 気道系浸潤高度進行食道癌に対する手術
安田 卓司
1
,
白石 治
1
,
岩間 密
1
,
加藤 寛章
1
,
木村 豊
1
1近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門
キーワード:
浸潤部へのカウンタートラクションを考慮した術野展開
,
気道血流の温存
,
死腔充填と大血管の被覆
Keyword:
浸潤部へのカウンタートラクションを考慮した術野展開
,
気道血流の温存
,
死腔充填と大血管の被覆
pp.379-390
発行日 2019年3月31日
Published Date 2019/3/31
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000001124
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気道系に高度に浸潤する進行食道癌の治癒切除は困難をきわめる。胸部上部または中部の食道癌は気管・気管支膜様部へ,反回神経周囲のNo.101またはNo.106recの転移リンパ節(LN)は気管軟骨輪へ浸潤しやすい。しかし,いまだ気道系に対するT4bの明確な診断基準は確立されておらず,明らかなT4b-気管の所見がなければ手術を行い,術中に浸潤の有無を判断するしかない。しかし,境界を比較的見極めやすい大動脈壁と異なり,膜様部壁は腫瘍とともにカウンタートラクションで動くため,慎重で確実な剥離操作が求められる。一方,明らかなT4b症例であれば合併切除が必要となるが,食道を切除・摘出し,気道周囲の郭清を行う食道癌手術では呼吸器外科手術と異なり,気道に対する支持組織の消失とそれに伴う死腔の存在および気道血流の低下が切除・再建後の治癒を困難にする。気道再建部の縫合不全は致死的であり,予後に関する臨床的意義は別として食道癌手術における気道系合併切除は慎重に症例を選択して適応すべきと考える。ただ,浸潤が疑われても合併切除なくR0切除できる場合は多く,そのためにも術野展開や気道系に対する合併切除を含む手術手技への精通は,適応の是非は別としてR0切除の可能性の向上,術中気道系トラブルへの対応の幅の広がりならびに安全性の向上という点で食道外科医が知っておくべき基本事項と考える。
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