憧鉄雑感
第127回 リアル講演会の愉しみ
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.1879-1879
発行日 2022年10月1日
Published Date 2022/10/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003595
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リモート講演会花盛りである。探せば毎日必ず何らかの皮膚科学の講演がインターネット上でなされており,時に複数が重なることも多く視聴すら大変である。職場や家庭で手軽に視聴できるのは誠に結構なことである反面,時に筆者など職場から演者として講演させていただくと,はて? 今どの地域の先生方がご覧になられているのであろう? と距離感に悩むことしばしばである。さらに,明らかに怪しい講演会が存在する。演者として指定された会議室に行ってみると,我が担当者が一人ポツンとパソコンの前に鎮座している。「先生! お待ちしておりました!」恭しく筆者を座らせると,間もなく講演会開始である。あまりに寂しき空間に,本講演は誰がご覧になられるのか? と問うた。すると,担当者はまるで “フォアグラのテリーヌ・トリュフとブッフサレ・リ・ド・ヴォとレンズ豆のガトー仕立てに使う胡椒の種類は?” などと問われた如くぽか~んとしている。まさに想定外の質問であったのであろう。彼は一瞬怯み,おもむろに答えた。「全国の先生がご覧になられています。」明らかに怪しい。恐らく,筆者の講演なんぞ何ら益も無いため視聴者がいなかったか,予算消化のため暇人代表として筆者が呼ばれたに違いない。しかし,筆者は怪しげな話を聞かれず仕事が成立するほうが遥かに有難く,無聴講講演大歓迎である。不思議なことに講演終了後多数の,しかも明らかに事前に用意されたとおぼしき質問が寄せられる芸の細かさで,テレビのどっきり企画は斯様なものであろう。
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