巻頭言
観察精度と法則
今福 信一
1
Shinichi IMAFUKU
1
1福岡大学医学部皮膚科学教室,教授
pp.1469-1470
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000001576
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重力波が直接観察された,という報道が2016年になされた。重力波はアインシュタインの一般相対性理論からも理論的に導ける現象で,質量が高速で運動するときに生じる空間の歪みが光速で伝播することが予測されていた。その微弱な変化は実験室の質量では再現できない。測定の可能性があるのは巨大な質量が高速で運動する天体現象などにおいてである。間接的には,遠い連星パルサーの軌道周期が徐々に短くなることから,重力波によりエネルギーが失われていることで証明されていた(テイラーとハルス,1993年ノーベル物理学賞)が,直接空間の歪みの測定をすることは難しかった。それは,生じる空間の歪みが,地球と太陽の間の距離(1億5千万km)に対してわずかに水素原子一個分(0.1nm)程度の伸び縮みしかなく,それを検出しなければならないからなのだそうだ。
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