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クリプトコッカス髄膜炎は,クリプトコッカス菌(Cryptococcus neoformans)の感染により生じ,約40%に眼症状を合併するという報告がある。今回,網膜皺襞および視神経乳頭腫脹の精査中にクリプトコッカス髄膜炎の診断に至った1例を経験したため報告する。症例は50歳代男性。当院初診2か月前から感冒様症状(38℃台の発熱,頭痛,頸部痛)が遷延し,その後遠視化,歪視を自覚したため近医眼科を受診。視神経乳頭から黄斑にかけての網膜皺襞を認め,精査加療目的に当院紹介となった。眼底は両眼ともに視神経乳頭発赤・腫脹,網膜血管拡張・蛇行,視神経乳頭周囲から黄斑にかけての網膜皺襞を認め,光干渉断層計(OCT)では縦方向で目立つ網膜皺襞と網膜下液を認めた。Bモード超音波検査では眼球後方からの圧迫により眼底は眼球内側に凸になっていた(perineural enlargement)。Vogt-小柳-原田病や視神経周囲炎,強膜炎を鑑別に挙げ精査中に意識障害が進行し,神経内科へコンサルトを行った。協調運動障害や髄膜刺激徴候,造影MRIで中脳周囲髄膜の造影増強効果,血液検査でクリプトコッカス抗原陽性,髄液検査で初圧の著明な上昇などが確認されたことから,クリプトコッカス髄膜炎の診断に至った。さらにFilmArrayⓇ髄膜炎・脳炎パネルにおいてクリプトコッカス菌が陽性であり,抗真菌薬の点滴内服治療を開始したところ,眼底所見では視神経乳頭発赤・腫脹,網膜皺襞,網膜血管拡張・蛇行ともに改善を認めた。また,OCT所見でも,網膜下液は消失し網膜皺襞は改善傾向となり,それに伴い歪視の自覚も改善した。眼球後方からの圧迫所見の改善傾向に伴い遠視化も改善した。
両側性の視神経乳頭腫脹を認める症例においては,眼局所疾患以外に早期から頭蓋内疾患も鑑別にあげ,他科と協力して多角的に診療を進めていく必要がある。

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