症例報告
両側外眼筋炎による眼球運動障害を呈した腫瘍随伴症候群の1例
小川 可奈英
1
,
坂井 翔太
1
,
末森 晋典
1
,
望月 清文
2
,
竹田 太郎
3
,
坂口 裕和
2
1松波総合病院眼科(岐阜県)
2岐阜大学医学部附属病院眼科
3松波総合病院放射線診断科(岐阜県)
キーワード:
腫瘍随伴症候群
,
外眼筋炎
,
眼球運動障害
,
paraneoplastic syndrome
,
orbital myositis
,
ocular motility disturbance
Keyword:
腫瘍随伴症候群
,
外眼筋炎
,
眼球運動障害
,
paraneoplastic syndrome
,
orbital myositis
,
ocular motility disturbance
pp.79-85
発行日 2024年1月5日
Published Date 2024/1/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003483
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腫瘍随伴症候群としての外眼筋炎の報告は極めてまれである。今回,乳癌患者における腫瘍随伴症候群に伴った両側外眼筋炎と眼球運動障害の1例を経験したので報告する。患者は57歳女性,主訴は複視。乳癌に対する外科的治療後の化学療法中に腹膜播種と癌性腹膜炎が生じ,腹膜炎発症1か月後に複視が出現し眼科受診となった。初診時矯正視力は右1.0,左1.0,眼圧は右17mmHg,左18mmHgであった。眼位は正位で,右方視,上方視において複視を認めたが,両眼の前眼部,中間透光体および眼底に特に異常はなかった。網膜電図は正常応答で,視野異常はなかった。眼窩造影MRIでは両側外直筋の腫大を認めた。血液検査ではTSH 1.7μIU/mL,TgAb11IU/mL,抗TPO抗体<9IU/mL,IgG4 41.3mg/dLといずれも正常範囲内であった。以上より腫瘍随伴症候群による外眼筋炎と診断した。全身状態不良のためトリアムシノロンアセトニドTenon嚢下注射(STTA)とプレドニゾロン20mg内服を開始したが著効せず,さらに眼圧上昇をきたし抗緑内障薬の点眼を開始した。両外直筋の腫大と複視症状の悪化に伴い再度STTAを施行するも効果なく,眼科初診5か月後に全身状態悪化により永眠された。担癌患者における複視症状は,腫瘍随伴症候群に起因した外眼筋炎の可能性があることを念頭に置くべきである。
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