症例報告
Hemifield slide現象による上下複視を初発症状とした下垂体腫瘍の1例
粕谷 友香
1
,
近藤 玲子
1
,
牧野 伸二
1
1自治医科大学眼科学講座
キーワード:
下垂体腫瘍
,
両耳側半盲
,
hemifield slide現象
Keyword:
下垂体腫瘍
,
両耳側半盲
,
hemifield slide現象
pp.487-491
発行日 2023年5月5日
Published Date 2023/5/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003132
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Hemifield slide現象による上下複視を初発症状とした下垂体腫瘍の症例を経験したので報告する。患者は67歳男性。上下複視のため,当科を紹介受診した。眼位は交代プリズム遮閉試験で,近見で2ΔXP’,遠見で4ΔXT L/R2Δであった。大型弱視鏡による自覚的斜視角は,正面では−1°,上下・回旋偏位はなく,他覚的斜視角は+0.5° L/R 0.5°であった。対座法で両耳側半盲が疑われ,Humphrey視野検査で確認された。光干渉断層計では両眼とも黄斑部鼻側の網膜神経線維層厚および網膜神経節細胞層厚の菲薄化がみられた。頭部MRIで,トルコ鞍内から突出するだるま型の下垂体腫瘍があり,視交叉を圧迫していた。本症例では,両耳側半盲があり,外斜偏位と上下偏位を伴っていたため,融像が困難で,複視を自覚したものと考えられた。眼位ずれが軽度であっても,視野障害を伴っている場合,hemifield slide現象を呈することがあり,その可能性を念頭に患者への説明,検査,治療にあたる必要がある。
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