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症例は73歳女性で、5ヵ月前に右第V趾壊死に対する切断術を受けたが、その後、左第I趾に紫斑、紫色調変化が出現した。局所冷感があり、足背動脈、後脛骨動脈は触知良好であった。造影CTで腹部大動脈以下に明らかな狭窄・閉塞像なく、腹部エコーで脾腫を認め、染色体検査はt(9;22)転座によるBCR/ABL陽性細胞はなかった。ABI、SPP、画像検査より足部の血管障害を疑う所見はなかった。血管造影では下腿三分枝は造影され、腹部CTでも塞栓の原因と成り得る大動脈病変を認めなかった。自己抗体も認めず自己免疫性疾患は否定的で、耐糖能異常もなく糖尿病も否定的であった。血液検査上、Hb 17.0g/dlと増加し、腹部エコーで脾腫を認め、好中球アルカリホスファターゼスコア、ビタミンB12は基準値範囲内であったがエリスロポエチン(EPO)は低値で、二次性ではなく真性の赤血球増加症が疑われた。慢性骨髄性白血病(CML)の鑑別のための染色体検査ではt(9;22)転座は認めなかった。真性多血症の診断基準をみると、大基準A1のヘモグロビン値上昇、小基準B2のEPO低値は満たしたが、大基準A2のJAK2変異については遺伝子検査が保険適用外であったため施行できなかった。血液内科を受診した結果、完全には診断基準に合致しないが総合的に判断し真性多血症と診断し、早急にブスルファン2mg/日による治療が必要とされ、骨髄生検の結果を待たずに治療を開始した。以上から、真性多血症に伴う血液粘稠度の上昇、血栓による足趾虚血を考えられた。ブスルファン、バイアスピリン(アスピリン)投与を行い、4ヵ月後には血球数は正常化した。足趾は壊死に至ることなく、徐々に改善し色調は改善し、その後は再発はない。
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